これがきっと、人に恋をするという事なんだよね――?



幾ばくか流れた静けさのあと、フッと一笑するような息遣いが聞こえた。




「それじゃ、日本に着いたら連絡するよ。

会社に戻って報告しなきゃいけないけど、なるべく急いで…」


「…日本って?」


意味がよく分からず、大和の言葉を遮るようにオウム返しをしたのだけれど。




「あれ、言ってなかったか?

真咲と会った次の日から、本社に出張で来てるんだけど…」


「きっ、聞いてないよ…!」


あまりにも彼が飄々と、トンデモナイ事を告げたから目を丸くしてしまう…。




世界的企業であるGELの本社と言えば、アメリカのロサンゼルスを指していて。



この電話はもちろん、国際電話中というコトになるじゃない…。




「あぁ、そうだったのか…ゴメン!

随分浮かれてたし、言い忘れたのかもな――」


「ッ…、ホント…?」


“浮かれた”というフレーズにドキっとして、キュッと携帯を握りしめると。




「真咲…、帰ったらきちんと話をしよう?

伝えてない事が多すぎだ、俺ら・・・」


「っ、うん・・・っ」



電話の向こうで聞こえる、優しい大和の声に涙が止まらなくなった・・・