恋 理~renri~



入り口に常駐する警備員さんに、いつもと同じように挨拶をしてから。



平日のバタバタ具合が嘘に思えるほど、シーンと静まり返ったフロアを歩いた。




亜実の事は詮索されないように、2課の課員がいなければ良いな・・・



営業部に到着して、そう念じながら部署のドアを開いてみれば。




「係長っ!?」


「う、宇津木君!

どうして貴方が・・・」


珍しいというか、意外な人物1人だけが仕事をしていた…――




「やり終えていない仕事が気になって…。

休んでいられなかったんですよね」


「そうだったの、ご苦労様!」


言葉の通りに宇津木君のデスクには、様々な書類が散乱していて。



不器用で気が小さくても、やる気だけは部内で一番だと嬉しくなった。



「あの、もしかしてその子…」


「そっ、妹の亜実よ!

可愛いでしょう?」


珍しく労いの言葉を伝えたのに、彼は見事にスルーしてくれて。



亜実の頭を撫でながら、宇津木君にシスコンぶりを晒していれば。




「ハイ、係長そっくりで可愛いですね!」


「っ――!?」


何なのよ、その“係長そっくりで可愛い”って・・・