人混みを掻き分けて近づく彼に、鼓動だけが早さを増す。
どうすれば良いのか、分からないほど・・・
「ゴメンな、真咲…」
「そんな、私のことは気にしないでください!
丁度、部下と出くわしていましたので…。」
呼吸を整えつつ、こちらをジッと捉える大和さん。
ドキドキしながら、チクチク痛む心臓に困っていると。
「係長、この方が…?」
私の肩にポンと手を置き、尋ねてきた宇津木君。
「あっ、そうそう紹介するわね!
大和さん、こちらが部下の宇津木です。
この方は私の友人で、川崎 大和さん。」
彼の言葉に、慌てて紹介をするという始末だ。
まったく大和さんがいると、平常心を忘れてしまう・・・
「初めまして、宇津木です。
川崎さんと係長は“ただ”のご友人ですか…?」
「ハハ、今は――な…?」
「へぇ~」
「・・・?」
そんな私を置き去りで、何処かピンと張り詰めた空気が流れる。
なんか…、雰囲気がおかしい・・・?

