俺が初めてアニキに会ったのは、14才の夏だった。


夏休みに入ったばかりで、街にはヒマなガキでごった返してた。
もちろん、俺もヒマなガキの一人だった。





「ざけんなよッ!!!ゴルァ!!!!」

「ッて…なー!!!!」


「ばきっ…ゴキッ」




地獄だ…。
5対5のケンカは圧倒的に俺たちの負けだった。

目の前では仲間たちが、ボコボコに殴られている。




嘘だ。
ありえない。
だって俺のツレは、みんなスゲェ強いんだ。
学校じゃセンコウだってビビってんだ。

なのに
なんで????




目の前で繰り広げられる惨劇を俺はただ見ていた。

ツレが殴られて、血が頭からも口からもいっぱい出て、ぐっちゃぐちゃになってるのに

俺は誰も助けなくて

ただ、路地裏の電信柱の陰に隠れて

震えて見ているだけだった。



俺の四人のツレは、相手のチームの四人にボコボコにやられていた。
相手チームの一人はケンカの輪からは少し外れたところで、悠々と煙草を楽しんでいた。
それは、独特の甘い香で有名なガラムって煙草だった。
10代半ばの子供が吸うような煙草じゃないのに、そいつにはすごくガラムが似合う。
身長は170センチくらいなのに、線が細くて筋肉がしっかりついている。
ガッチリ固めたリーゼントは金髪に染められて、顔は白人系のハーフみたいだから変な外国人みたいだ。

目があった。
変な外国人のアイツはくわえ煙草のまま

「にや」

と笑った。



血まみれの仲間と
人間が殴られて壊れていく音と
ガラムの香と

変な外国人と



頭がぐちゃぐちゃになった。





「オイ、まだ一人残ってんじゃねぇか」


相手チームの1番デカイ奴が近づいてくる。


「う…ぁ」

怖くて声にならない。



「ガツッ」



聞いたこともないような音が頭いっぱいに響いて
俺は気を失った。