「え……?」 私は、耳を疑った。 そして、ぐっと引き寄せられる。 「桃がアイツを好きなことを知りながら、ずっと桃の気持ちを無視してきた。本当は、桃が俺からアイツをかばったときから、もう完全に分かってた。それなのに、自分の気持ちばっかり押し付けて、ごめん。本当に、ごめん。好きだったよ。好きすぎて、離したくなかった……」 冷たいレンの温かい手。 香水の香り。 震えた声。 揺れる瞳。 もう 触れられることも 嗅ぐことも 聞くことも 見ることも ………ない。