「あ、そこ空いてんじゃん!桃、座れよ」 人で埋まった席。 その中で、レンは一か所だけ隙間が空いているところを指した。 「え、レンは?」 「俺はいーの!」 そう言って、レンは私を空いた席に座らせる。 そして、自分は吊り革に掴まり、私の目の前に立った。 だけど、目の前にいるのに、さっきからレンは私の方を見ない。 今だって、不自然に窓の外ばっかり見ている。 そう言えば、会ってからろくに目を合わせていないような…。 「ねぇ、レン?」 私は、下からレンの顔を覗きこんだ。