対峙しているだけで精神が消耗する。

止まらない汗を拭う事もできず、俺は考える。

…正直もう逃げたかった。

この場から逃走したい。

そこまで考えて。

「…………!」

俺はハッとした。

君を殺す気で『反撃』するという達人…無力化してみろという達人。

ならば。

「……」

俺は構えを解いた。

そして迷う事なく踵を返し、道場の入り口から外へ出る。

その俺の行動を見て。

「…お見事」

達人が柔和な笑みを浮かべた。