「そろそろイイかな。」


頃合いをみて、小出家へと向かう途中、


「トクー!」


辺りをキョロキョロ見渡すと、
手を振りながら駆け寄って来る、茜の姿があった。


茜は、徳幸の腕を自分の両手でつかみ、

「ごめんなさい。ちょっとだけつきあって!」

と、小声で呟くと、
徳幸を引っ張って走りだした。


そして、茜の彼氏らしき男、タカの前で立ち止まり、
両腕を絡ませてきた次の瞬間、

「あたし、この人のことが好きになっちゃったみたいなの!」

(ええ〜!!)


まさかの展開だった。


激しく眉間にシワをよせて、徳幸を睨み付けるタカが目に入いり、

(そりゃ、そーなるよなぁ…)


なのに、茜は言った。

「これでわかった?」

(わかるワケないだろ〜!)


そんな茜に対し、

「おまえ、人のことオチョクルのもいい加減にしろよ!!」

タカの声のトーンは低かった。


(確かに、これで納得しろってのはムリだよ!)


そして、とうとう…

「今までは好きな人いなかったから!だから…でも、やっぱりムリ!だってタカは、あっちゃんじゃないもん!」

「ふざけんな!アツキがなんだよ!なぁ!おい!」