なんとなくだが、

徳幸は、光一とぎこちなかった。


それは光一に気付かれているのだろうか?


二人だけでの会話は、これといって無いのだか、
妙に目が合うような気がしてならない。


でも、自分がそうだから、相手もそう見えてしまっているのかもしれない。


基本的に、徳幸は昔から、
気になるモノをジッとみつめたり、
気に掛かることをずっと考えてしまう癖がある。


まわりから“わかりやすいヤツ”と言われ、
今では気を付けて、だいぶ“わかりにくいヤツ”になったつもりではいるが…


『バンドマン宣言』をした矢先、そのあとすぐに聞かされた、
光一が波多野を好きだった説に
動揺を隠せず、
できるだけ、光一と二人きりになるのを避けている自分を、

(ちっせーな、俺)と…


なんとかしなくてはイケナイことは分かっていた。


恋に関して、そんな徳幸だが、
体育際や球技際でもわかるよう、
勝負には妥協できない、意外と狭気に富む男だった。


それは、ある夕暮れ時のこと。


その日はブラバンの練習がなく、小出家には、光一が彼女も連れて行くと言うのだ。


もちろん、波多野も一緒ということに、

ためらう徳幸は、

「用事を済ませて後から行くよ!」と、

時間をずらすことにした。