徳幸、碧人、神戸の三人は、部を引退した三年生バンドからチケットを買い、
客として、
悔しさ半分に、興味も抱きながら
そのライブへと足を運んだ。


先輩バンドはともかく、
他のバンドは、皆、慣れた感じでエムシーもこなし、演奏だって完璧なものだった。


参考までにと思っていた徳幸も、すっかりタテノリで、

なかでも、最後のバンドには、感動すら覚えた。


(俺らもいつかは、こーゆー場所で、こんな風に人を集めて、会場を一つにさせるようなパフォーマンスのできる、そんなバンドになってやんよ!)


そう自分を奮い立たせる、徳幸の隣で、
碧人や神戸も、どう感じていたのか、
一切、会話がなかった。


悔しさのあまり、彼らを誉めることができなかったのだ。


そんなとき、神戸の持ち味が場を和ます。


「やっぱ、文化祭とは違かったなぁ。」

「あたりまえだろ!」


碧人とふたり、まるで合わせたかのように、声を揃えて言い返した。


「ぷっ!ははは!」


そして、笑いが落ち着いとき

「やっぱ、あーゆーステージ、イイよなぁ。」

「でも、スゲー緊張すんだろうなぁ。」

「文化祭も緊張したけど」

「あれは初めてだったから!でも、なんつーの、安心感があったっつーか、」

「あん。そーゆー意味じゃ、あの場所も必要だよな。積み重ねっつーの。」