波多野からの御墨付きをもらった“新しい風”こと、徳幸は、

これからいくらでも、告白のチャンスがくることを信じ、

とりあえずは、

何かを進展させたいと悩む、波多野の手助ができるよう心がけた。



そんな徳幸は、小出家にむかう電車の中で、茜を見かけた。


この前、波多野から話を聞いて、毛嫌いすることはなくなったが、
どちらかと言えば苦手ではあったし、こちらから声をかけるほど親しくもないので、
この場は気付かぬ振りをした。


駅に着き、やはり気まずいと思った徳幸は、茜と少し間が空くよう、ホームで時間稼ぎをした。


(もう、いいだろう。)


改札を抜けて、一度辺りを見渡してから、小出家へと足を向けた時、


「何してたんですか?」


茜が待ち伏せしていた。


「…トイレ。」

「…なーんだ、あたし避けられてるのかと思っちゃった。」

「…」

「トクって無口だよね。」

(トクだと!)

「あの連中と話とか合うの?」

「そのつもりでいるけど。実際には分からない。」

「…かたい!」

「はあ?」

「ねぇ、ぶっちゃけ、あたしのこと嫌いでしょ?」

「!」

「図星だ!でも気にしな〜い!だってあたしも嫌いだもん!」