ある日、波多野から徳幸にメールが入った。


『今度の日曜日は空いてる?』

『明後日?』

『うん。ちょっと、つきあってほしいとこがあるんだけど。』

『別にいいけど。何?』


メールのやりとりすら緊張していた徳幸は、
用件を知らされてから、一段と落ち着かずにいた。


それもそのはず、

光一と彼女の律子とのデートに、波多野と二人でつきあうと言うのだから…


まさに、ダブルデートとしか考えることのできない徳幸は、
その当日まで、
気づけば、勝手に妄想シュミレーションをしてしまう自分を、現実に引き戻す
そんな作業の繰り返しの中、
もう少し続いたなら、
その境が分からなくなるところだった。


そして当日。


「『トクちゃんと行く、懐かしの湘南紀行!』ってことで!」

「なんですか?それ!」

「まあまあまあ。もっとトクちゃんを知ろうと言うね!そんな企画ですよ!」

(完全に、利用されちゃってるだろ、俺!)

「天気にも恵まれて、楽しくなりそうだよね!」

「ふぅ…まぁいいや。ありきたりなとこしか知らないけど…行きますか?!」

「わーい、行こ行こ!」

「ガイドさん、まずは江ノ電っすか?」

「はいはい。乗ります。」

「ヒュー、ゴーゴー!」

「あのさ、ずっとこのテンション?」

「お望みならば。」

「うん、望まない!フツーな感じで行こっか!ね!」