その時、
波多野の携帯の着信音が鳴った。


「あ、光一だ。“もっしもーし!…あー、出てきちゃった!…今、トクちゃんと一緒!”」


電話相手に話す、波多野の言葉を聞きながら、
少しだけ、抜け駆けがバレた様な気分の徳幸は、
会話の展開が気になっていた。


「“…あー、良いよ!ちょっと待って!”ねぇトクちゃん、打ち上げしないかって!」

「今から?」

「うん。この近くにね、中学の時の友達の親がやってるお店があってね、そこで!」

「あ、いいよ!」

「おっし!“行くってさぁ!…うん、じゃあ、先に行って待ってる!はーい!あとでね!”」


なんとなく残念な気がする徳幸に対し、

「じゃ、行こ!鉄板焼屋さんなの!もー、お腹空いちゃったよぉ!」

波多野はご機嫌だった。


「色気より食い気だな。」

「気取ったってしょうがないでしょ!」


こんな波多野だから、徳幸は安心できて、
だから、好きになっていったのだろう。



店に着くと、六人掛けテーブルに通された。


お互い、向かい合って座ると、とりあえず飲み物を頼み、
波多野は、早々と幾つかメニューも注文していた。


「それ、一人で食うつもり?」

「まさか!いっくらペコペコでも」

「だよな、ビックリしたぁ。」