「そーゆー面倒なのはイイや!俺!」

「でも、入部希望は断れないよ。」

「…」

「いっぱい来そーだね、ガールズバンド!」

「窓口って、あの部長だろ?皆、恐れなして逃げ帰るんじゃん?」

「あはは、良い人なんだけどね〜!」

「昨日、碧人のこと怒らせてたな、部長さん。」

「その前に、あの褒めっぷりは珍しいんだからぁ!他の部員が聞いたら怯えるよ!不吉だって!」

「ひで〜な。」

「あれ?」

「ん?」


波多野の目線の先を見ると、
そこには、茜の彼氏らしき男、タカの姿があった。


一緒に居る仲間も、ガラの悪そうな連中だったが、
波多野にとっては、後輩にあたるため、
気がついたタカは、波多野に軽く会釈をして見せた。


「悪い子じゃないんだよ。」

波多野はそう言うが、
横を通り過ぎる間、ずっと、彼の視線を感じていた徳幸にとって、
なかなか信じがたいことだ。


「そうだ!バンド。」

「ん?」

「前に言ってたじゃん…茜ちゃんがメンバーだったって。」

「そーだよ!」

「それって、どーゆー成り行きで?」

「うん。…茜ちゃんはね、あたしの母の生徒さんだったの。」

「?」

「うちは昔、ピアノ教室やっててね…でも、ある日を境に辞めちゃって。茜ちゃんもピアノが弾けなくなってね…」