波多野は興奮して、自分のクラスの成績など構わず、徳幸の活躍に拍手を贈っていた。


「おまえは応援するクラスが違うじゃん。」

「そーなんだけど、ボールすら触らせてもらえないって感じで…」

「それにしてもウメーなトクのヤツ。なにが俺と同じだよ!完璧にスタメンだったろこれ。」

「コービーやったの?」

「一回戦負けっす。」

「こりゃあ、水を得た魚だな。」

「…ねぇ…ホントはバスケがやりたいんじゃ…」

「…。」



その予想は、違う形となって、碧人の耳へと入ってきた。


「バンドが抜けられないんだって!」

「なんか、小出と早川がクラスに乗り込んできて、断れなかったって話だよ」


もちろん噂話だったが、
火の無い所には煙はたたない。


球技祭の最中に、バスケ部員に入部を薦められた徳幸は、
即答で断ったのだが、
どこからか、漏れた話が次第に変化していった。


そのうち、顧問からも誘いを受けることになった徳幸のもとに、
心配した波多野が、ひょっこり顔を出した。


「今が旬のト〜クちゃん!」

「お。」

「体育祭の時も足速かったもんね。本当はスポーツマンだったんだ!」

「やめてください。」

「バスケ、なんでやらないの?」

「…バンドがやりたいから。」

「!」