その時、

「ギター弾けんだって?」

「!」


話しの展開に、一番、拍子抜けしたのは木村だったに違いない。


「まぁ…少し…」

「どのくらい?」

「…中2ぐらいから。」


周りもホッとしたようで、
たちまち、教室の空気が流れだしたのがわかった。


「つか、おまえどこ中?」


そんなことを聞いてどうするのだろうか?


特に隠すことはないから良いのだが、

「東京だから」

詳しく知りたければこうだ… 


転勤の多い父の仕事の関係で
生まれは横浜、
幼少時代にはアメリカにも住んでいたが、
慣れない言葉と育児におわれ、軽くノイローゼにかかった母に連れられ、父を残して帰国。

しばらく、祖母の家で暮らした小学生の頃、

そろそろ、思春期をむかえる子供のことを考え、
出世の海外勤務を蹴った父と、家族揃って福岡へ。

そして中2の終わりに、
東京に転勤となり、
高校に入ったら、もう転校は出来まいと、
子供に選ばせた高校の側に家を購入し、やっと落ち着いたと言う訳だ。


生まれ故郷に戻って来たのは、偶然ではなかった。


祖母も、かなり年をとったことだし、
どうせなら同じ県内に居たほうが安心だが、
父の勤務先から離れすぎても大変だということで、
ここが、一番都合良かった。