「あ!バラードやらねーのって…そーゆーこと?」

「…やりてーの?」

「どっちでもいいけど」

「まあ、いつかは…だって、できねーだろ、まだ!」

「バラードは、上手い下手がモロバレだからなぁ。それこそピアノがメインならともかく…」



小出家の敷地内に入ると、
微かに、軽快なピアノの音が聞こえてきて、
徳幸は無意識に、その流れてくる方に目をやった。


「あれ?帰ってきてる。」

「誰?」

「妹。」

「へー、さすが上手いもんだなぁ。」

「これが本職だから。」

「こんだけ聴かせるなら、防音じゃなくてもイイってワケか?」

「ドラムセット置きたかったから、ピアノは家に運んだんだ。」

「…これがホントのドラ息子だな!ウマイ!」

「…そーゆーの言っちゃうタイプだったんだ?」

「無かったことに…誰にも言わないでくれ!」

「うん。口にするのも恥ずかしくて、言えない。」

「クソッ。」

「あはは、安心したよ!トクのこと、まだ、あんまよく知んねーじゃん!波多野がさ、俺らにムリにつきあってんじゃねーかって言うからよぉ。」

「ムリはしてない。おまえらの“絆”みたいなもんに、割って入れっこないことは分かってるし…」

「なにそれ〜。水臭いじゃん!ガンガン入ってきちゃってよ〜!」

「隠さず普通に接してくれてるのとかで、そーゆー気持ち伝わってるから、心配しないでよ!気に喰わなけりゃ、俺も言うから!」