「なんか、悩み事?」

「え?(この女、勘がいいなぁ。)べつに。」

「そ?碧人と意見が合わないとか、皆とソリがあわないとか…」

「!(そっちのことかぁ。)ないよ!」

「なら良かった!」

「…波多野こそ、人のことより、ブラバンとこっちの両立、大変じゃないのか?」

「でもほら、トクちゃんが入ってくれたおかげで、キーボードの負担が減ったから助かってるよ!」

「…そうなんだ。」

「逆に、トクちゃんが大変じゃないかと思って。」

「全然!好きでやってるから。」

「…そっか!」

「うん。」



そのまま、音楽室の楽器庫に、ギターを置きに立ち寄った徳幸は、
中の物音に気付き、恐る恐るドアを開けた。

そして、目の前に現れた人影に驚き、思わず、

「お〜〜!!アセった〜!」


出て来たのは光一だった。


「なんだよおまえ〜!」

「こっそり朝練。」

「一人で?」

「今、試験近いから朝練がないんだ。ちょうどイイから、ちょっとだけ。」

「熱心なんだな。」

「今、碧人とコービーがあんなだろ。碧人独りにしたら、ヤケになって、解散だ〜とか言いだしそうで、こっちサボったから!」

(なぁんだ。実は気ぃ使ってんだ。)

「でも、トクが居てくれるから大丈夫そうだな!」

「…知らねーぞ。フォークデュオになってても。」