碧人達のバンドが抜けた分、
もうひとバンドが
初めての文化祭で、
演奏を披露することができたのだ。


それはそれで、
結果オーライというものだ。



そして…
最後のバンドが、演奏を終えた。



『本当なら、今そこに立っているのは、自分達のはずだった。』


そんなことを思いながら、
当日、手伝うことすら叶わなかった、
そんな自分達の存在が、
悔しくも、
情けなくて仕方がなかった。


と、その時。


会場から、
碧人コールや、
メンバーの名前を呼ぶ声が聞こえてきたのだ。


気が付いた徳幸の視線に
なに気なく入ってきたのは、

ただ、腕を組んでうつむく、碧人の姿だった。


光一も、神戸の右肩に、自分の左腕をのせ、
その声に、じっと耳を傾けている様子。

その横で神戸も
前髪をクシャッといじりながら立っている。


そんな光景を目にした徳幸は
両手を腰の両脇に掛け、
自分の上履きのつま先に視線を移し、目を閉じた。


すると、

微かに、

何かが聞こえてくるのに気が付いた。