数えたくもない失恋のおかげで、

夏休みの後半は

とにかく、
ギターに明け暮れる日々の徳幸だったが、


その目的を

まさか、
こんな形で奪われることになるとは、

誰も考えはしなかっただろう。


それは、

夏休みが明けてからの出来事だった。


弁当を早めに食べていた、
碧人と光一が、
購買部に向かう途中の廊下でのこと。


突然、碧人が、
波多野の彼氏に殴りかかり、
まわりに居た野球部仲間も巻き込んでの、
乱闘騒ぎを起こしたのだ。


光一は、なんとか押さえようとしたが、
その時の碧人に至っては、
止めようがなかったと言う。


それは、紛もれない事実だった。


碧人も、否定をしない。


なにしろ、言い訳もせず、
頑なに、口を閉ざしているため、

さらに、反抗しているともみなされ、
一週間の停学処分を受けることとなった。


口止めされていた光一だったが、

律子によって、
真実を暴かさせられるまでは、
誰もが、
ただの嫉妬か、腹いせだと思っていた。


理由はどうあれ、
先に手をあげたのは碧人であり、
やはり、暴力は良くなかった。