「うお〜!鳥肌がたつぜ〜!」

「うん。」

「こんなにデカイ騒音なのに、
“うるせー”て感じさせないのがスゲーよなぁ!」

「え?何?聞こえなかった!」

「いや、なんでもない!」

「えー?気になるー!」


初めての、女の子と二人だけで見る花火は、
やはり少し、今までとは、何かが違く感じられた。


しばらくして、
その場を去ることにした二人は、
今から花火を見る人達の流れに、逆らって歩いて行かなければならなかった。


2、3歩先を歩く徳幸だったが、
何度も、後ろを振り返っては、
茜の様子をうかがって、
本能的に、
手を、後ろへと差し伸べていた。


そして、
なんとなく、ためらう茜の手を、
奪い取る様、自分から繋ぎ、
一歩前を歩き続け…


逆を行く、人の群れが少なくなってきた頃には、
二人も並んで歩いていたが、

夜空に舞う花火に、気を取られ、
繋いだその手を、離すことなく、
気付けば駅に着いていた…

そんなところだろう。


「ありがとう。」

「あ。」


繋いでいたことを、すっかり忘れていた徳幸は、
慌てて離したその手が、
急に淋しく感じて、腕を組んだ。


その手の温もりを、もう少し感じていたかったのか、
逃げていかぬよう、押さえ込むかのように…