「…取り込み中みたいだったから。」

「喧嘩か?」

「だって、友達と約束があるから、帰るって言うんだもん。」

(あれ?違うだろ?!)


徳幸の耳に聞こえてきた内容と違うことに、すぐに気が付いてはいたが、
その妹の話に、すっかり流されてしまっていた。

「碧人って、そんなに恐れられる存在なわけ?」

「全然!」

「ヘナチョコ兄貴だよ!ただね、幼なじみに悪いヤツがいてね、中学まで一緒にツルんでたから、便乗して後輩から恐がられてんの!笑えるでしょ!」

「どした?今日は珍しくよく喋るなぁ。」


徳幸が余計なこと言わぬよう、
そして、その隙を与えぬよう、
茜は必死に喋り続けていた。


そんなことは、徳幸もお見透しだった。


(まったく、女ってヤツはコエ〜よなぁ。なに考えてんだか分かんねーし。)