「!」

「頭、冷やさんか!」


徳幸は、もともと少なかった荷物を持って、
勢いよく出て行った。


そのあとの防音室でのことなど、何も知らずに、
“もう、バンドも友達も、どーでもイイ!”とまで思っていた。



「なんでトクが、あの曲をやりたかったか分かるか?」

めずらしくも冷静に、
神戸が碧人に問いかける。


「…波多野のためだろ?」

「そう!トクは波多野のために…波多野のことを想って、波多野へのメッセージとも思えるこの唄を、気持ちを込めて、碧人に歌わせようって考えたんだよ。」

「!」

「…なぁ碧人。皆、先へ進んでるぞぉ。碧人だけが、昔に縛られてんじゃねーか?」


何も言わない碧人をおいて、
神戸も、重い扉を開けて帰って行った。


そしてそのまま、3人は音信不通に…。


その後、神戸はというと、
光一と一緒に、吹奏学部の手伝いをしていた。


光一も嬉しそうだったが、神戸から聞いて、碧人のことも心配しているようだった。


徳幸は、これと言って、何もしておらず、

でも、碧人に言われた言葉が気に掛かり…

これからのことも考えると、

茜とのことに、どうケリを付けるかとか、

碧人には、
考えるコトと時間があり過ぎた。