まずは、コピーできるレパートリーを聴かせてもらうことにした。


確かに碧人は、歌に力が入ると、ギターの手が止まってしまう。


でもそこは、キーボードが上手くカバー出来ていて、
メロディが途切れることはないが

もともと、キーボードが居ないバンドの曲でも、
そういった時の対応に、
キーボードのメロディラインを、自分達流に作っているらしく、
ソレはソレで凄いと思うし、味もあるのだが、

原曲とかけ離れ、迫力に欠けてしまってもいた。


「凄いね。このアレンジは碧人が?」

「いや、波多野。」

「はーい!あたしあたし〜!」

「ほー。なんか、スゴいんだな。おまえらコピーじゃなくて、オリジナル作れそーじゃん。」

「あったりめーだろ!そのつもりだよ!」

ドドドン!!


碧人の、威勢の良いひと言に、
神戸がドラムで、さらに色をつけた。


その瞬間、
徳幸は身震いを感じた。


久しぶりに、身体中から何かが湧き上がっていたのだ。


この連中と出逢い、仲間になれたことを幸運と思い、
自分が足を引っ張るなんてことにならぬ様にと、
焦らされる気持ちすら覚える。


そんな、良い緊張感が徳幸を襲ってきて…

「トイレってどこ?」

すると、

「あー、ごめん。ココないんだよ。」

「はぁ?」