「違かったんじゃねーの?」

「だって二人、すごくイイ感じだったんだよぉ!」

「…」

「前に、四人で湘南に遊びに行ったときだって、」

「四人?」

「うん。香織が木村くんを誘って、ダブルデートしたの!聞いてない?」

「んぁ…」

「だけどほら、小出くんの妹さんが出てきちゃったでしょ…」

「!」

「もしかして木村くん、妹さんが好きだったりして?」

「それは」

「ソレならしょうがないか!ただ気が合うってだけの子より、好きな子の方がイイにきまってるよね!」


碧人には知らないコトばかりだった。


波多野が言い寄られていたことも、
徳幸との様子と、デートのことも、
自分の妹が絡んでいることも…

でも、すべてのことに、
“そうあってもおかしくはないコトだ”と、理解できはできたものの、
やはりそれには、かなりのショックを受けていた。


それをひた隠す碧人に、
律子は、追い打ちをかける様に続ける。


「コレはあたしの推測だけど、ホントは香織、顔を合わすのが辛くて、バンドを抜けたんじゃないかって…」


状況は、さらに深刻を増した。


「相変わらず、野球部からのラブコールは続いてるし、まさか、押しに負けちゃったりもして……香織、言ってたんだよねぇ。妹さんの大胆発言のあと。」

「なんて?」

「“恋がしたくなっちゃった”みたいなぁ…」