「新しい曲は増えた?ごめんねぇ!あたし達、香織を横取りしちゃったみたいで!」


律子は、軽いコミュニケーション的に、碧人に話かけた。


「全っ然大丈夫!ま、あの部屋が日に日に汚くなっていってるくらいかなぁ。誰も掃除しねーから!」

「やだー!怖っ!」


自分の彼氏の親友と同じクラスになり、さらに近しい存在となった律子は、
碧人ファンに、気兼ねすることなく話ができる。


知るかぎりでは、律子は、その優越感にひたるようなタイプの人種ではなかった。


いわば、天然でマイペース。

だから、

思ったことは何でも聞くし、口にしてしまうところがある。


光一も、質問されるまでは面倒臭いのか、自ら、あまり話さないらしい。


律子は、碧人に興味が無いぶん、
碧人のことを知らなさ過ぎたのだった。


「ところでさ、その後、木村くんはどんな感じ?」

「ん?その後とは、どの後?」

「香織が抜けてからにきまってるでしょ!」

「!」

「結局どーしたのかなぁと思ってさ!」

「何を?」

「あたし忠告したんだよ!香織が野球部の先輩に言い寄られてた時、木村くんに、気持ち伝えるようにってさ!」

「…それは、波多野がトクを好きだってコト?」

「と、あたしは思ってる!香織はごまかすから、木村くんをケシカケたのに、男らしくないんだから!」