春一番が、とっくに吹き荒れた頃、

碧人らは、予餞会で、
旅立ちや別れ、希望をテーマにした曲を披露し、
体育館中が、それに共鳴してくれたように感じた。


新入生歓迎会では、
さくらがモチーフになった選曲で、
どうしたら良いのか、分からないでいる新入生を尻目に、
もう、常連と言っても過言ではない、碧人達の出番を待つ在校生が、その場を盛り上げていた。


どちらも“大成功”といったところで、
毎度お馴染みになった、
鉄板焼屋での、打ち上げ最中の六人だった。


そのとき徳幸は、
碧人と波多野が、離れて座っていることに気が付いた。


でも単純に、
今日は律子が居るから、いつもと違っているだと思っていた。


徳幸が今まで、二人の関係に気が付かなかったにしても、
今日は、不自然なくらいに話さなければ、
目を合わせもしない。


(なんかあったのかな?)

徳幸が思った、その矢先のことだった。


「ああ、そうだ!文化祭にはさぁ、“В”みたいな、男くさい楽曲やらね?」


突然、碧人が言いだし、

「え…どうした?急に」

神戸がきいた。


「ノリに関しては他のバンドに任せてさ、オレらは聴かせにイクって感じで」

「だって、キーボードないじゃん、あのバンド。」


すると、


「あたしがね!…もうムリなの!」