慕わしく思われて見えた未知子に、
徳幸は少し安心した。


「陸上部だったの?」

「そう。笑えるんだよ!三年の夏前に腕を怪我してね、担任が陸上部の顧問だったから、足を使え!って言われて…最後の総体はバスケじゃなかったの!」

「あは、俺も!」

「え?」

「三年の時の転校で、バスケと縁が切れたんだ。」

「バスケやってたの?」

「うん。」

「…なんか、気が合いそうだね、あたし達。」

「そんなこと、俺、五年前に気付いてたんだけどなぁ。」

「あはは。ごめんごめん。」

「軽くあしらわないでくれよ〜。」

「そんなつもりナイって!木村くんのことは、幼い頃の良い思い出だよぉ。だからホラ、今こうして会って、笑って話せるんじゃん!」

「そ〜っすね!」

その時だった。

「恩田か?」


ジャージ姿の男が立ち止まって言った。


「先生!」

「お〜!元気か、おまえ!」

「うん!なんとか。」


その先生とやらは、チラチラと徳幸のことを気にしているようだった。


「あ、彼はね先生、小学校の時、きょーちゃんと競うほど足が速かったんだよ!」

「ほー。どこの中学に居た?」

「福岡に転校しちゃったの。」

(え、覚えててくれたんだぁ。)