「多分、認めたくねんだよ。アツキが居なくなったこと…」

「あ…。」

「茜ちゃん、葬式にも行ってないんだってさ。」

「…事故のあと、しばらく笑うことがなかったんだけど…泣いても無いんだよ!あいつ。」

「…」

「影では泣いてんのかもしんねーけど……だから、あいつがトクを好きだって言うのも、あんまマジにとらないでやってほしいんだ…悪いな。」

「…なるほどね…」

「ま、トクは自惚れるようなタイプじゃないから、大丈夫だよ碧人!」

「あー俺、この手のメンドーなこと苦手だから。」

「知ってる。」

「でも、このままでイイの?」

「しょーがねーよ。」


(良いワケねーじゃんか!)

珍しく、徳幸は熱くなっていた。


それが誰のためにだかは、自分でも分からなかったが、

とにかく、

“このままではイケないんだ”ということは分かった。


そして、家に着いた徳幸は、
机の上に、無造作に置かれたままになっていた、
梅原から貰ったメモを手に取り、
携帯電話を開いた。


数字は、軽やかに押すことができたが、
最後のボタンには、少しだけためらっていた。


「おりゃっ!」


目を閉じて、その呼び出し音を聞いていると、
自分の鼓動が、調和されていくような気がしてくる徳幸だった。