その時の茜の様子は、

どこか、いつもと違ってみえた。


顔は笑っていたのだが、
瞳は寂しそうだったというか…



同じ状況にあるにもかかわらず、
片方の幸せを考えて
もう片方には嘘をつくよう、持ちかけてしまった徳幸。


波多野のことが心配で、
また、
碧人のことがほっておけず、

茜の心境など、全く考えていなかった自分が、
茜のことを傷つけてしまったということに、気がついた。


この問題は、思っているより、とてもデリケートなものだったのだ。


今の今まで、
この状態のまま、時間だけが過ぎてきた理由が、
やっと分かった徳幸だった。