「珍しく不機嫌だ」
「シュリ」
庭でぼんやりしていた僕に、面白がった声をかけてきたのは妹のシュリだった。
「リン、お姫様だったんだってね」
どうやらシュリの耳にも、昨日の一件のことが届いているみたいだ。
「フルム国ってどんな国なの?」
「なんで僕に? リンに直線聞けばいいだろ」
「聞きにくいでしょっ。訳ありみたいだし」
まぁ、シュリの言うことも確かだ。
一国の姫が他国の侍女をやっているなんて、やっぱり普通じゃない。
「本での知識しかないけど」
「充分よ。で?」
「大きな田舎町って感じかな。気候も土壌も良くて、農業が盛んなんだ」
「へぇーっ。なんかリンの生まれた国って感じだ」
母上に似た涼やかな笑顔を浮かべるシュリに、僕も強く賛成した。
穏やかな国。
そこで育ったリンだから、あんなに明るくて温かいのかもしれない。
「ねぇ。じゃあ、ついでにウーラ国は?」
「水都。フルム国とか周りの国の水源になってる」
「ふーん。水源か」
さっきから色々と聞いてくるけど、まるで核心には触れてこない。
こういう時のシュリは我が妹ながら何を考えてんのかサッパリわからない。

