「普段の澄まし顔とあまりに違い過ぎて……夢か幻か、疑うくらいだ」
「現実よ」
「わかってます。……現実です」
そうだ。
こうして俺がシュリを抱き締めて、彼女の想いを受け入れてしまっているのは紛れもない現実だ。
「ホントにわかってる? わたし自分の意志でここにいるの」
「…………」
「そんなに思い詰めた顔しないでよ……」
シュリの顔がまた悲しげに俺を見上げている。
本当なら下臣であり年上である俺が、一時の感情に絆されてはいけないことを諭すべきだ。
「わたしがショウを想うのは間違いなの?」
「……間違いは正せば良いのです」
こう言ってシュリの体をそっと俺から離し、正面から彼女を見据えた。
まだ過ちは起きていない。
今ならまだ勘違いで引き返せる。
「間違いで人を好きになったりしない」
また彼女の瞳に涙がこみ上げていく。
どうかそんな哀しそうな顔をしないで欲しい。
俺なんかを選んで後から泣く姿を見るくらいなら、今涙を流す姿を見るのは仕方ないのだろう。
目の前の彼女の涙を見つめながら、俺は自分自身に言い聞かせた。
「……わたしが神聖な身に生まれたのはこの為。ずっとそう思ってた」
「えっ?」
「ショウの悲しい穢れを清らかにする為。わたしはその為に生まれて、ショウと出逢ったの」
「…………」
「わたしがショウを護る」
そう言って俺を見つめる彼女はいつもの綺麗な澄まし顔でなく、ただの純粋な少女の顔だった。

