あれから数日。
お嬢様の近衛兵を辞任する件は、ひとまず保留ということにされた。
相変わらず貴族を水浸しにする彼女の傍で、俺は焦りを含んだ悶々とした日々を過ごしていた。
「じゃあ、結婚でもしちまえば? おまえも良い歳だしさ」
「なんでそうなる?」
偶然にも洗濯場でのやりとりを見ていたユウセイに相談を持ち掛けてみれば、返ってきた答えがこれだった。
やっぱりコイツじゃダメだな……。
聞く相手を間違えた。
思わずため息をついた俺に構わずユウセイが更に言葉を続けていく。
「おまえも結婚すれば、親父さんみたいに引退する気が起きるだろってことだ」
「結婚する気も引退する気もない」
きっぱりと否定した俺の言葉に、案の定とユウセイは苦笑いを浮かべた。
「……まぁ、こればっかりは他人がどうこう言うべきじゃないけどな」
ユウセイが結婚結婚と言うのも、自分が妻子持ちだからだろう。
家族を抱えた男は簡単に死ねない。
これがすっかりユウセイの口癖になっていた。
しかし、そんなことも俺には関係のない話だ。
孤児だった俺に家族なんて言葉は似合わない。
「じゃあ、シュリ様に全部打ち明けるしかないだろ。暗殺を辞める気はない。だから貴女の近衛兵を辞めますって」
確かにユウセイの言う通りだ。
俺は暗殺を続けるから近衛兵を辞める。
こう言ってしまえば彼女は何と言うだろうか。

