『natural source』(naturally番外編)

このまんま身を委ねたらどうなるんだろう……。


なんてバカな考えが頭を掠めた。

だって……こんなことの為にわたしは、王家専属の薬師になったわけじゃないっ。


「怪我人らしくしろっ!!」



とろけそうなキスに酔う頭のどこかで冷静なわたしが声をあげてる。

ふっと我に返ってキスにストップをかけた。




何を間違ったら手当てしに行ってこんなことになったんだろ……。


ランシェ様が怪我人なんてことも忘れて、力一杯突き飛ばした。

突き飛ばして、部屋を飛び出して、来たときよりも頭真っ白で全力疾走する。





「おかえりぃ~。ランシェ様どうだったぁ?」


すごい剣幕で家を出て行っていただけに、先生も第一声はランシェ様のこと。


「元気! 問題なし!」

「あっ……そう」


即答するわたしの答えに拍子抜けした声を出す先生。


ごめんね、先生。

今は頭を冷やしたい……。

住み込みで働いてるわたしに与えられた部屋に駆け込み、窓際に置いた写真立てを手に取る。
亡き両親と弟とわたしが幸せそうに笑ってる。


もう戻らない時間。

もう戻らない幸せ。

孤児院に引き取られた頃、毎日泣いてた弟も今は剣術の勉強をしている。


それが何の為なのかはわからないけど、きっと考えてることはわたしと同じ。

だから、これ以上不幸な結末を招くなんて、わたしがさせない。


先生に弟子入りしたときから決めてたんだから……。


わたしが、あの成り上がり貴族に復讐するって。


「……先生、ごめんなさい」