『natural source』(naturally番外編)

「痛ってぇー!! おまえ何塗ったんだ!!」

「……良薬口に苦しです」


ランシェ様の切り傷は少し大きいものの、傷自体は浅かった。

わたしは先生がわざと傷にしみるように作った軟膏を塗っていく。


これくらいしてやらないと気が済まない。
だって……。


「何が口に苦しだよっ! 苦くない薬作んのが仕事だろがっ」

「怪我人なら大人しく手当てされてなさいよっ! バカ!」


ここに来るまで、思考が停止したんじゃないかってくらい頭が真っ白になった。


無我夢中で、汗が落ちるのも息が切れるのも忘れて走ってきたんだ。


それなのに……。


今、目の前で相変わらず憎まれ口叩いてんだもん……。

そりゃあ安心して涙だって出てくる。


「……泣くか怒るかどっちかにしろよっ。メンドクサイ」

「うるさいですっ」


メンドクサイって言い方がなんだか、くすぐったいくらい柔らかかった。

包帯をぐるぐる巻き付ける手も涙も止まらず。

滲む視界で手当てを終えたわたしを待っていたのは、何故かランシェ様の口付けだった。


「俺の為に泣く女」

「ちがっ……んっ」


ランシェ様の深緑の瞳に虚ろげなわたしの顔が映る。

そこに間髪入れず次のキス。