『natural source』(naturally番外編)

気がつけば僕の体は、部屋のベッドに寝かされていた。


「……シューゴ様」


やたらに重い瞼を全力で開けると、リンの穏やかな笑顔があった。

国へ帰る最後の最後まで、僕の傍にいてくれたことが嬉しくも切ない。

いつだってこうして僕を傍で支えてくれていたリンを、今度は僕が助けたいのに……。

高熱の体は僕の自由も希望も奪っていた。


悔しい……。
声にも涙にもならないくらい悔しい……。



「リン……」


熱い口の中からやっと絞り出せたのはリンの名前。

曖昧な意識の中でただハッキリと浮かぶリンの笑顔が、もう見られないって思うと、情けないけど涙がこみ上げてきた。

自分に悔しくて仕方ない。

こんなにリンを想う気持ちは強いのに、どうすることも出来ない……。


「シューゴ……」


胸の辺りに心地良い重みを感じた。
そこに手を伸ばせば柔らかな感触。

……リンの頬だ。

そこにリンの手が重なる。


「ここで、あなたに必要とされるのが心地よかったの……」

「…………」


「フルム国の為にウーラ国に嫁げって言われたり、タクト王子は見た目に美しい女を嫁に欲しがってるとか……こんなこと言われて結婚したがる人いないに決まってる……」