「じゃあさ、水源が水を止めたらどうなるの?」
「そりゃ農業が出来なく……」
「リンと結婚させなければフルム国に水を送らない……卑怯な奴の考えそうなことよね」
淡々と語るシュリの口振りはまるでそのことを知っていたかのようで、僕の頭の中は混乱し始める。
「フルム国のお姫様って、結婚前に暫く余所の国で侍女として修行に出されるらしいよ。まぁ、普通は二年もいないらしいけど」
やっぱりシュリは事情を知っていたらしく、驚く僕の顔を平然と見据えていた。
「……どうする? リンの王子様?」
こう言ってにんまり笑うシュリの顔は、ランシェによく似てる。
僕を騙したな……シュリのヤツ。
「どうするって言ったって……」
「リン、帰っちゃうよ? フルムに」
「……えっ?」
「昨日、タクト王子と付き人が来たでしょ? あれ、迎えだったらしいよ。リンが頼んで一日延ばしてもらったって」
何でも無いように語るシュリの口調が呆然としている僕を、現実に引き戻していく。
リンが……いなくなる。
「ちょ、ちょっと! 兄さんってば! 倒れてる場合じゃないでしょ!」
気付けば僕は草の上に寝ころんでいた。
体中が熱くて、重たい。
シュリのうるさい叫び声も心地良いくらい……今、眠い。

