銀のしずくふるふる 金のしずくふるふる

「会長」

耳のすぐそばで声がした。

俺は目をあける。

怖くなってそっと腕をうごかしてもみる。

腕はうごく。

今度は大丈夫だ。

「会長。大丈夫?」

目の前に小森がいた。

その横に、桜井。山中、田口。

その後ろには佐藤と木崎の顔がある。

そしてその真後ろでは親父が、こんどはにたにらせずに、心配そうに俺を見つめている。

俺はまわりを見渡した。

ここは親父の診察室だ。

ウインナーや玉子焼きの匂いはもうない。

母さんはいないんだ、と俺は突然悟る。

泣きたくなる。無償に。

大切なものを失くしたときの圧倒的な虚無感が俺を襲う。

なにかを残して戻ってきた後悔にどっぷりと浸かってしまう。