銀のしずくふるふる 金のしずくふるふる

呼ばれなくても上がっていくつもりだった。

だって、舞は籠から出されたまま、地べたの上に寝かされているだけだったのだから。

すぐに駆け寄って介抱しようと、参加者でぎゅうぎゅう詰の列を、四苦八苦しながら抜けているときだったんだ。

正婆は、首を軽くふって右手をあげ、俺のほうにむけた。

すると、いままでなんだかんだと喋ることに夢中で、なかなか俺に道をあけてくれなかった人たちが、同じ方向にすっと体をひねって空間をつくってくれた。

まっすぐに祭壇にむかう通路が、あっという間に現れた。

俺はそこをメコンノマコイを右手に握ったまま、猛ダッシュで舞の側へと急いだ。

「眠っているだけだから、心配いらん」

正婆は、祭壇にたどりつくなり、舞の頬をたたいて起こそうとした俺にむかってゆっくりといった。

会場の喧騒からは想像できないくらい、祭壇の上は静かだった。

目にはみえないけれど、二つの間にはなにの膜が張られているような感じだった。

じっさい、俺よりさきに、舞を助けようと祭壇にあがろうとした何人かは、祭壇の数センチ前で弾かれるように尻餅をつき、けっきょく会場に戻っていっていた。

「正婆、なんで舞なんだ?」

俺は、木崎が話してくれた夜からずっと聞きたかったことを、まず聞いた。

どうして舞がこんな目にあわなきゃいけないんだ。

正婆は黙って俺を眺めている。

会場からは鳥のようにみえたけれど、いま、俺の目の前にいる正婆は、前よりも痩せた、皺だらけのばあちゃんだ。

小さい体に無理をして沢山着込んでいて辛いのだろう、汗をだらだらと流している。