銀のしずくふるふる 金のしずくふるふる

どこからか親父の念が飛んできた。

そうだ、メコンノマコイだ。

俺はものすごいだるさに逆らって、ぽけっとの中に手をもっていく。

動かない。

右手が何トンもあるみたいだ。

重くてまったく動かない。

「あ、やっぱり、ふりあげられた槍って一番きれい。きらきらきらきらしてる」

桜井の声はもうほとんど聞こえないほど小さい。

舞。舞。舞。

俺は歯をくいしばって、右手にすべての神経を集中させる。

舞。舞。舞。

ありとあらゆるいままでの、たのかった思い出の力を集中させる。

はじめて食べたメロンの味。

母さんが作ってくれたチョコレートケーキ。

母さんが犬アレルギーだけどちょっとだけ飼った黒い子犬。

家族でいった海水浴。

庭でそろって食べたスイカ、遊んだ花火。

母さんの浴衣姿。

母さん! 母さん! 助けて! 母さん!

ふっと右手が動いた。

俺はメコンノマコイをポケットから取り出し、包んでいたハンカチをとって、すっと抜いた。

それをかかげたまま、立ち上がって、今度こそ渾身の力でもって叫んだ。