銀のしずくふるふる 金のしずくふるふる

なにをふざけたこと、いってるんだ。

あれは熊なんかじゃない、人間じゃないか。

足を曲げられて、手も胸で縛られ、うつむいて眠っている人間の女の子じゃないか。

俺は必死に叫ぼうとするのだけれど、声にならない。

桜井までもが、かわいい、白い小熊、なんてはしゃいでいる。

桜井、なに喜んでるんだ、あれは舞じゃないか、早くいって助けなきゃ、槍で突かれて殺されちゃうぞ。

俺は焦って、焦りまくって、でも何もできない。

体が動かないんだ。

なにかできつくとめられたみたいに、どうあがいても微動だにしない、声もでない。

そうこうしているうちに目があった。

正婆と。

正婆は祝詞をあげながらゆっくりと振り返って俺を見ていた。

ねずみを睨みつける蛇の目。

俺はそれで、ああ、とわかった。

やっぱりそうだったんだ。

あのデートはそうdったんだ。

自分のベッドで目覚めたときに感じたことは本当だったんだ。

目の前にいて、ほんとうはいなかった舞。

あんなに確かめあえていて、なにも確かなことがなかったあの日。

いったいどこからが、幻だったんだろう。