銀のしずくふるふる 金のしずくふるふる

桜井も変に思っているらしく、しきりに俺の顔をみる。

周りの参加者たちも同じようだ。

普通ならまずありえないことだけれど、正婆が祭壇にあがっているのに、周囲の人との私語に止まる気配さえない。


ー送る熊はどこにいるんだ?-

ー送る神がなくて、イヨマンテといえるか?-

ーまさか、正婆もぼけてきたんじゃないだろうなー

ーでも噂にきくと、今回でトゥークを引退するとかなんとかー

ーほんとうか? でも、正婆が引退したら次に誰がいる?-

ートゥークの家系はきまっている。もう正婆の下はおらんぞー

ーでもまれに、まったく違う家系から出てくることがあっただろうー

ーああ、聞いたことはある。でも稀だ。五十年に一人とか二人とかー

ーしかし、トゥークがいなくなったら、‘ここらへん’は大変なことになるぞー

ーそうだ、支える大きな柱がなくなることになるー

ー飲み込まれるぞ。外にー

ー飲み込まれるな。外にー

ー外にー


俺は反射的に親父を探した。

念をいくつも飛ばして、ユーカラの風にのせようとした。

でも無駄なことにすぐに気がついた。