銀のしずくふるふる 金のしずくふるふる

太鼓の音が会場のあちらこちらから聞こえてきた。

親父もたぶんあれのひとつを叩いているはずだ。

「カムイ・ヒツマ。イワン・イワン」

太鼓たたきの幾人かが声をあげる。

「カムイ・ヒツマ。イワン・イワン」

会場の参加者がいっせいにそれに従う。

 神のささやき、何度も、何度も。

 神のささやき、何度も、何度も。

太鼓のリズムはだんだんと早くなり、やがて乱れ打ちのようにまでなっていく。

どんどんあがって、どんどん広がる。

「カムイ・ヒツマ。イワン・イワン」

参加者の声もどんどん熱をおびて、もうほとんど叫んでいるという段階になったときに、祭壇の後ろから、正婆が現れた。

正婆は民族の正装姿で、背中、腕、頭のまわり、あらゆるところにイナウをくくりつけている。

遠くからみれば、たぶん、鳥のように見えるだろう。

どうみてもいつもは腰をまげて歩いている老婆には見えない。

正婆は、ゆっくりと祭壇の真ん中に進みより、まず深く礼をした。

祭壇には無数のイナウが飾られているだけで、小熊のはりぼてもなにも出てはいない。

5年前は正婆が出てくるのと同時に、鎖でつながれた小熊がひっぱられてきたし、2年前のは張りぼてではあったけれど、ちょうど生後一年目くらいの大きさの小熊が、やはり正婆の登場といっしょに祭壇の上にかざられた。

どうして今年はなにもないのだろう?