内藤が立って静音の前に来た。そして肩を抱いた。

「静音。儂はお前が愛おしく心配じゃ。決して悪い様にはせぬ。儂の所へ・・・いってって」
 内藤の右手は静音に外側に捻られていた。静音はそっと内藤の手首を握ったようだが、そのつぼを押さえられ、力を入れることは出来ず簡単に捻られたのだ。
「し、静音!手を放せ!」
 内藤は手首を押さえて静音から少し離れたが、こちらを見もせずに自分をあしらった静音に腹が立った!
「静音!それなら力尽くで儂のものにする!修理など忘れさせてやるぞ!」
 ここが古性家ということは頭から飛んでいた。目付役(現代の警察の内部監察の様な役目)らしくなく、本来、おっちょこちょいで熱い性格なのだ。

 足を引きずりながら、袴の股立ちを取って小袖の腕まくりをする。そして甲冑術の構えである左半身となり、両腕を丸くして腰の位置に着けた。
 戦場の組み討ちの兵法である。
 静音を組倒しこの場で契りを結ぶ!これももののふの甲斐性じゃい!
 静音もぱっと立ち上がり、半身になって間合いを取った!
「お相手致します」
「お前をこれから組伏して儂のものにする!依存は無いな!」
 静音はふっと微笑んだ。
「よろしう御座います。静音を見事捕らえて、お好きな様にしてご覧なさりませ」
「・・・よう言うた。覚悟せよ!儀太夫殿が何と言おうとお前を貰ってゆく!これは儂とお前とのいくさじゃ!よいか!」
 静音の目に生気が戻った。このいくさ面白い!
「心得た!」