だが、静音の心は死を覚悟し落ち着いていた。

 剣の極意は相討ちの心。
 相手の繰り出す刃を避けるのでは勝敗は運を天に任せるしかない。相手の振り下ろす刃に乗り勝つには、自分の身体の中心線にそって、相手よりも早く正確に剣を切り下げるしかないのだ。

 だがその前の策略も方便。静音の心に奇策があった。
 じりじりと間合いをお互いに詰める。静音は柄に手を掛けたままだ。横に抜くつもりか。

 作兵衛は勝利を確信した。

 横に抜くために鞘を払う時間にくらぶれば、八艘から振り下ろす時間の方が圧倒的に早い。こ奴、道場ではならしたのだろうが、それで儂に立ち向かうとはまだ経験が足りぬ。

 ・・・だが直ぐ殺すのは惜しい。
 右腕を切り落とし、戦闘力を奪って後は出血で死ぬまで陵辱の限りを尽くす・・・ぐふふ、それに決めた。
 この外道は舌なめずりした。