本堂の中では裕之助と二人の同僚、伊那作兵衛が、蝋燭の灯りのもとで酒を酌み交わしていた。

「作兵衛殿!お主まっこと強い!あの老いぼれを一刀のもとに斬り下げるとは!」
 酒を裕之助に注がせながら、作兵衛は自惚れた様に言った。

「儂の前に敵は居らん。斬り合いなら必ず勝つ!・・・お主、本当に儂に道場を呉れるのだろうな!」
 裕之助は酔った口調で、
「心配するな!儂の安芸の分家は大金持ちでな。塩田を差配して居るのだ!ははは」

「書状はあるのか?」
 裕之助は懐をぽんと叩いた。
「父上からちゃんと貰っておる!一生不自由はない食い扶持はある!」

 次郎三郎が自分で杯に酒を注ぎながら言った。
「・・・しかし静音をものにしたかったのう」