「まあまあ、房ばあ。落ち着きなよ。
年なんだから、ね?」
思わず飛びだす。
「杏里お嬢様。いつから?」
「さっき。オレンジ、なかなか
根性あるじゃんか。いっつもみんな
逃げ出すのに。」
そう。はげが見つけてきた新人の
3分の2はここで脱落する。
オレンジは逃げなかった。
それにもまして口答さえ
しなかったのだ。
「今日は杏里様に免じてここまでで。」
そう言うと房ばあは行ってしまった。
「ども。」
「は??」
いきなりオレンジが喋る。
「いや、だから助けてもらって
ありがとう…ございます…杏里お嬢様。」
「別に助けてないし。あたしは房ばあの
ことを思って言っただけ。
何勘違いしてんのよ、オレンジ。」
ふん、っと今にも鼻がなりそうな勢いで言う。
「あ…そ。ってか俺はオレンジって
名前じゃない…ですから。」
たしかこいつの名前、魁人だったよね。
「じゃあ魁人、あんたに一つ
命令があんの」
「なんすか。」
「その詰まり詰まりの変な敬語、どーにか
しなさい。あとあたしお嬢様って
つけられんの嫌いだから。」

