「なあにヒロシ君。ローラーダッシュ、いやモビルブーツから手を引くって意見なら却下よ」

華も二人の気持ちが冷めつつあるのをうっすら察知していて、逃げないように釘を刺す。

華の表情は笑顔のままだが、ヒロシは華の気配が変わるのを感じた。

「やだなあ華さん。違いますよ。そうじゃなくですね、ええとつまり…」

まさにそのつもりだったが、身の危険を感じたのでヒロシは慌てて方向転換する事にした。

「つまりですね、保安部品がいるのも安全性がいるのも、乗り物としてですよね。
それでは本来のコンセプトの『手軽さ』から外れてしまうのでは?って事が言いたい訳です」

「でもそれは仕方ないんじゃない。実際に道路を走るんだもの」

「いいえ、そこがまさに違うのです。ローラーダッシュは乗り物の延長線上にあるものじゃなく、あくまで靴の仲間なんですよ」