思い過ごしだ。何かの間違いだ。

自分でそう結論付け、尻餅をついた伊織を見る。

ぶつかったのは男子生徒で、転けて半泣き状態の伊織に手を差し出している。

涙のたまった瞳で男子生徒を見上げ、引っ張り起こして貰い、ニコリと笑った。

……イラッ。

微かに、その光景に苛つくモノを覚えた。

待て、何だ今の。

別に、苛つくコトなんて、何一つなかったはずだ。


「……熱でもあんのかな」


ボソッと呟き、そしてそう言うことにする。

ホント、アイツはとことん苦手だ。