「こんなコトで嘘付けたら、たぶんお前のこと泣かせないと思うよ」


俺、不器用らしいから。

俺の言葉を整理しているのか、伊織はしばらくジッと黙っていた。

それから、グスッと鼻を啜りだした。


「……また泣くか」

「だって……だってぇ……嬉しいんですよぉ~!!」


伊織が顔を上げたそうだったので、腕の力を弱める。

顔を上げた伊織は、頬を涙で濡らしていた。


「わ、わたしも波留先パイが大好きなんですよぉ~!!」


その泣き顔が、あんまり可愛いから、俺はつい口元を綻ばせる。


「……そっか」


コクコクと頷く伊織。

そして、幸せそうな笑顔で、俺を見つめる。


「……ホント、無防備」


自分の気持ちを理解した。

伊織が笑顔を見せてくれた。

だったら、


「ぜってぇ離さねぇ」


呟き、伊織のアゴに手を添え、持ち上げる。

その唇に、深くキスを落とす。

そっと唇を離す。


「そう言えばわたし、ちょっと前に波留先パイと眠ったとき、先パイからおでこにキスされる夢見ました」


伊織が潤んだ瞳で、顔を赤くしてから俺を見上げた。

……あーあ。


「……もう我慢できねぇ……」

「せ、先パイ?」


キョトンとする伊織の腕を引っ張って、すぐそこにあった保健室のドアを開けた。

どうやらコイツは、俺を狼にしたいらしい。



+無防備な君に恋をする+
(は、波留先パイ!?わたしを押し倒して何するんですかぁ!?)
(俺の理性を壊した罰)